センサーやデバイスなどをシステムやWebサービスに接続することには、大きな困難があります。センサーやデバイスのデータを活用する段階に困難があるということではなく、活用する手前の段階に、大きなハードルがあるというのが実態です。
デバイスメーカーは、組み込み用言語で出力データセットを作成します。いっぽうシステム、サービス開発側は、組み込み開発向けとは異なる、Webサービス開発にむけた言語を習得しているのが基本で、まずデータを理解するための開発言語のギャップがあります。
また、デバイスメーカーは、それぞれ開発の歴史をもっており、データづくりにおいて独自に不文律のルールを持っているケースも少なくありません。
その結果、Webサービスのエンジニアがデバイス会社が独自に持つルールを理解していなければ、データを活用するまでに長期の調査を必要とします。(1-2年かかることもあります。) こうした時間や費用のロスがIoT活用へのブレーキとなっています。
しかし、解決のために、どのデバイスでも使える標準データ形式を定め、すべてのデバイスメーカーに適用を促すことも現実的ではありません。
コンテナフォーマットは、デバイス側の変更を求めず、システム側から容易にデータを活用できるよう、間に辞書を差し込み、システム側が参照するという、双方にメリットのある解決策となっています。
コンテナフォーマットの特長は下記のとおりです。
ポイント
現状の課題
標準化のメリット
接続性
A社(体温計) デバイスはA社 ビューワ (体温表)・アプリのみでしか利用できない等のメーカー/サプラヤー側の囲い込み
デバイスメーカーやビューワ・アプリ、通信方式等の組み合わせを問わず利用できる。
選択性
限られた有力メーカーの製品しか供給されず、選択肢が少ない
価格/特徴など、多様なメーカー、製品から選択できる。
新規性
限られた市場の中で、限られた種類・ジャンルの製品しか供給されない
ウェアラブル・IoT化された、新たなジャンルの製品供給が期待できる。
機能性
導入後は、デバイスの一部の機能・性能が劣る場合でも使用継続
機能・性能に優れた製品を、適宜導入(追加、交換)・利用できる。
汎用性
新規使用時に、デバイスメーカーごとに、接続設定方法を習得する必要あり
デバイス接続の (ICT) スキルやリテラシーを問わず誰でも使える。
操作性
接続方法がデバイスで異なるため、数多くの機器を接続する場合、接続に手間を要する
接続方法などが標準化されているため、すぐ・いつでも使える。
使用開始までの時間が短い
流通性
様々な制限のため、測定データ等を限られた範囲でしか利用・共有できない
必要性に応じ、測定データ等を自在に利用・共有できる。
結合性
デバイス・メーカーの制約から、解析・評価できるデータの種類が限られ、追加活用への難易度も高い
多様なウェアラブル・IoT機器の測定データを、広範・容易に統合・連携・活用できる。
デバイスやシステムは、データをそれぞれ独自の形式で作成しています。そのため、システム設計・改修では、データ通信方法・形式にかかわる調査と書き直し、再テストなど、独自の形式をプログラムの中に組み込むための負荷とコストが膨大にかかり、IoTシステム開発の大きなネックになっています。
このネックを解消するには、デバイス提供者とシステム構築側がデータフォーマットの規格を共有して通信することが必要です。IECでは、メーカー間を乗り越えた国際標準の取り組むべき課題と捉え、デバイスとシステムがスムースにデータをやり取りするためのフォーマットを標準規格として制定しています。
そのために作られたのが、「コンテナフォーマット」です。IoTデバイスのデータを、ベンダー独立の「コンテナ」でやりとりすることで,開発コストの大幅な削減,柔軟で拡張可能なサービス提供が可能になります。
コンテナフォーマットとは、多様なセンサデータの流通性,可搬性を向上させる,標準化されたデータ構造の仕様です。
(従来の)センサデータに標準化されたヘッダを付加するだけのシンプルな構造デバイスのデータの流通の問題は、
そのデータ形式がまちまちであることから来ています。そこでコンテナフォーマットでは、「データ形式を記載したリポジトリを準備し、システムがリポジトリを参照して必要なデータを取得・活用できる」しくみにしています。
2020年より経済産業省のプロジェクトがスタート、リファレンスシステムでの稼働確認と並行して、アプリケーション・サービス開発が行われ、普及促進にむけたセミナーを行ったほか、2022年度には多くの企業および薬局、医療機関などの多大なご協力を得て、ユースケース開発を行う研究会を実施しました。
2023年度からはコンソーシアムが発足し、活用拡大へ向けた活動を行っています。
コンテナフォーマットは、今後の高齢化社会で、デジタル機器が高齢者の生活を支えるために必要な標準規格を検討する取り組み「AAL(Active Assisted Living)」のなかで生まれました。AALの全体像については、こちらをご覧ください。